2006年6月の記事一覧
mam1995
数学強調週間 ( MAW )――4月23日〜4月29日, 1995
「 Mathematics and Symmetry / 数学と対称性 」
対称性は身の回り至る所,毎日見る物体の中にも顕れる.例えば,建物,床面や壁面のタイル,用具,自動車のハブキャップにも見られる.対称性は,自然のさまざまな形態にも見出される.人体における左右対称,花びらの回転および万華鏡的対称性,ツタや貝殻のらせん対称性,蜂の巣や魚の鱗の並進対称性等々だ.対称性は,色々な文化圏の装飾芸術にも見られる.例えば,アルハンブラのムーア人の装飾デザイン,アメリカの南西部のインディアンの織物,数学的モダン・グラフィック芸術家M.C.Escherの作品の奇妙に組み合わさった生物等々.実際,ある文化圏の装飾芸術に見られる対称性の特徴は,その文化圏のマーカーとなる.対称性は,巨大スケールでは,特殊相対論で距離の定式化や銀河の形に,ミクロのスケールでは,結晶構造の分類に顕れる.対称性は,数学でも重要な役割を演ずる.5次以上の方程式は,公式で解けないことの証明から,幾何学タイプの分類や保存則の存在などだ.数学者は,対称性とは,物体,図形や等式などを,不変に保つ変換の集合であると定義する.これらの変換の集合は,物体の対称性と呼ばれ,群をなしている:物体の対称群.人間の体や完全な蝶などの物体は,左右対称である.鏡映面に関し左右の映像は全く見分けることが出来ないからだ.同様に,繰り返し模様,壁紙模様は,動かしてまた重ねると.全く重なるようにできる.らせん対称の物体は,中心軸のまわりのらせん運動で不変となるような対称性である.群論により,パターンの異なるタイプを区別できる.群論を用いて,数学者は,繰り返し壁紙模様(周期的な平面タイリング)が,17種類であることを証明できる.実際,Lieの連続群の発見に始まり有限単純群の最近の分類までのこの百年で,群論は数学の最もエキサイティングな分野の一つになった.群論と,トポロジー,幾何学,解析学との膨大な関係を研究することは,数学研究の中心テーマであり続けている.ガロワ理論に始まり最新の研究へと続く対称性は,方程式−最初は代数方程式,今は微分方程式−の解を見出すことを可能にした.対称性は,多くの自然現象の数学的な記述で中心的な役割を演じる.3次元繰り返し模様のカタログは,結晶格子空間に原子がどのように配列するかのカタログと同一である.化学者と数学者は,結晶格子を保存するような回転軸,鏡映面,並進の許される組み合わせの詳細な検討を行い,230の結晶空間群--結晶構造の230の形式--を分類した.[訳注:Fedrov(鉱物学),Shenfries(数学),Barlow(実業家)がそれぞれ独立に導いた]対称性は,固体と液体の構造とふるまいを支配する法則の確立に努める物質科学と弾性学でも重要である.対称性は水素原子と分子の分光の理解の基礎となっている.20世紀物理学の2冠業績−−相対論と量子力学−−でも同様だが,素粒子やクォーク理論でも基礎である.現在進行中の統一場理論−−自然界のすべての力を導き出す一つの理論-−に関する研究を,物質宇宙の基本的な対称群の探索と見なしてもよい.その対称群から,すべての物理法則が導かれる.対称性は,技術分野でもびっくりするようなところに出現する.コンピュータ・ビジョンで人間の視覚(投影)の対称性は,医学応用で重要となる画像処理システムの数学的基礎デザインに繰り込まれる.制御理論の応用で,回転,並進対称は,飛行機や衛星のフィードバック制御を設計するときに考慮に入れられる.対称性の欠如は,美術や音楽でハッとする効果をもたらすように,対称性の欠如や消失は,自然現象のモデルでも,しばしば劇的な効果があり大きな関心事だ.構造がつぶれるとき,水の沸騰,(あり得るなら)豹に斑点ができ,トラに縞ができるとき,対称性が破れる.20年前,数学者と物理学者は,乱流へ至る道程をデモした.対称性の消失が引き続くと,さらに複雑な流体の流れに発展する.この種の探求は,対称性の明らかに逆説的な役割を与える.--その役割は,複雑あるいはカオスの振る舞いに至る道程.今年のMAWポスターの映像は,対称性とカオスダイナミックの結合を用いている.詳細複雑な構造は,カオス的ダイナミックスによるが,一方で規則的で見慣れているのは対称性による.
高次元の秩序はなんら全域的な対称性を持たないように見える.だが,対称性はこれらのパターンをも記述し分類する.並進を生じずに張り詰めているタイルと,新しく発見された”準結晶”.ここには,従来の結晶のモデルでは禁じられている対称性がある.昨今,注目を集めている二つの研究分野である.
「 Mathematics and Symmetry / 数学と対称性 」
対称性は身の回り至る所,毎日見る物体の中にも顕れる.例えば,建物,床面や壁面のタイル,用具,自動車のハブキャップにも見られる.対称性は,自然のさまざまな形態にも見出される.人体における左右対称,花びらの回転および万華鏡的対称性,ツタや貝殻のらせん対称性,蜂の巣や魚の鱗の並進対称性等々だ.対称性は,色々な文化圏の装飾芸術にも見られる.例えば,アルハンブラのムーア人の装飾デザイン,アメリカの南西部のインディアンの織物,数学的モダン・グラフィック芸術家M.C.Escherの作品の奇妙に組み合わさった生物等々.実際,ある文化圏の装飾芸術に見られる対称性の特徴は,その文化圏のマーカーとなる.対称性は,巨大スケールでは,特殊相対論で距離の定式化や銀河の形に,ミクロのスケールでは,結晶構造の分類に顕れる.対称性は,数学でも重要な役割を演ずる.5次以上の方程式は,公式で解けないことの証明から,幾何学タイプの分類や保存則の存在などだ.数学者は,対称性とは,物体,図形や等式などを,不変に保つ変換の集合であると定義する.これらの変換の集合は,物体の対称性と呼ばれ,群をなしている:物体の対称群.人間の体や完全な蝶などの物体は,左右対称である.鏡映面に関し左右の映像は全く見分けることが出来ないからだ.同様に,繰り返し模様,壁紙模様は,動かしてまた重ねると.全く重なるようにできる.らせん対称の物体は,中心軸のまわりのらせん運動で不変となるような対称性である.群論により,パターンの異なるタイプを区別できる.群論を用いて,数学者は,繰り返し壁紙模様(周期的な平面タイリング)が,17種類であることを証明できる.実際,Lieの連続群の発見に始まり有限単純群の最近の分類までのこの百年で,群論は数学の最もエキサイティングな分野の一つになった.群論と,トポロジー,幾何学,解析学との膨大な関係を研究することは,数学研究の中心テーマであり続けている.ガロワ理論に始まり最新の研究へと続く対称性は,方程式−最初は代数方程式,今は微分方程式−の解を見出すことを可能にした.対称性は,多くの自然現象の数学的な記述で中心的な役割を演じる.3次元繰り返し模様のカタログは,結晶格子空間に原子がどのように配列するかのカタログと同一である.化学者と数学者は,結晶格子を保存するような回転軸,鏡映面,並進の許される組み合わせの詳細な検討を行い,230の結晶空間群--結晶構造の230の形式--を分類した.[訳注:Fedrov(鉱物学),Shenfries(数学),Barlow(実業家)がそれぞれ独立に導いた]対称性は,固体と液体の構造とふるまいを支配する法則の確立に努める物質科学と弾性学でも重要である.対称性は水素原子と分子の分光の理解の基礎となっている.20世紀物理学の2冠業績−−相対論と量子力学−−でも同様だが,素粒子やクォーク理論でも基礎である.現在進行中の統一場理論−−自然界のすべての力を導き出す一つの理論-−に関する研究を,物質宇宙の基本的な対称群の探索と見なしてもよい.その対称群から,すべての物理法則が導かれる.対称性は,技術分野でもびっくりするようなところに出現する.コンピュータ・ビジョンで人間の視覚(投影)の対称性は,医学応用で重要となる画像処理システムの数学的基礎デザインに繰り込まれる.制御理論の応用で,回転,並進対称は,飛行機や衛星のフィードバック制御を設計するときに考慮に入れられる.対称性の欠如は,美術や音楽でハッとする効果をもたらすように,対称性の欠如や消失は,自然現象のモデルでも,しばしば劇的な効果があり大きな関心事だ.構造がつぶれるとき,水の沸騰,(あり得るなら)豹に斑点ができ,トラに縞ができるとき,対称性が破れる.20年前,数学者と物理学者は,乱流へ至る道程をデモした.対称性の消失が引き続くと,さらに複雑な流体の流れに発展する.この種の探求は,対称性の明らかに逆説的な役割を与える.--その役割は,複雑あるいはカオスの振る舞いに至る道程.今年のMAWポスターの映像は,対称性とカオスダイナミックの結合を用いている.詳細複雑な構造は,カオス的ダイナミックスによるが,一方で規則的で見慣れているのは対称性による.
高次元の秩序はなんら全域的な対称性を持たないように見える.だが,対称性はこれらのパターンをも記述し分類する.並進を生じずに張り詰めているタイルと,新しく発見された”準結晶”.ここには,従来の結晶のモデルでは禁じられている対称性がある.昨今,注目を集めている二つの研究分野である.
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