2006年6月の記事一覧

SGK通信(9)

数学と社会の架け橋を求めるメディアの声がしばしば登場するようになつた.朝日,社説,「数学の力」06/06/13,日経,続ニッポンの力「技術立国揺らぐソロバン」06/02/27など.本協会が掲げる数学文化の向上,浸透の必要性は衆目の痛感している所のようだ.

数学月間に適した将来の取り組みテーマについて,気軽に話し合いましょう.
(これまで,話題になったものの列挙)

1.エレベータの制御.通信.暗号.金融.
暗号は,米国MAMの本年テーマである.日本の実情に関するエッセイが欲しい.
講演会.講習会.研究会に発展させたい.

2.統計学の応用
医療.診療.治療.医薬.
社会心理学の解析.考古学.
各分野向けの研修会,研究会を求める声が多い.

3.数学力の進出/連携
バイオ.新材料.情報通信.生物学.工学.
諸科学・産業と数学の連携「礎の学問:数学」シンポジウムでの提言があった.→SGK(3)
各科学分野との発展.エッセイ,シンポジウムが望まれる.

4.企業経営.工程管理

5.ソロバン大会復活
ソロバン+パソコンの駅伝大会.脳機機能計測等

6.数学の魅力アピール
イベント.講習会.市民講座

7.数学と財政再建
小野晋也議員(著書:山田方谷の思想)提唱課題.TQMの地方行政への導入など.
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SGK通信(10)

米国MAW/MAMの概要紹介の第2弾です.
今回は,1996年〜2001年の分を公開します.
インターネット(1997)のレビューは,
会員の船田智史氏の協力を頂きました.

前回同様,誤訳発見やコメントなどお寄せください.
(もし,誤り等あれば,谷に責任があります.)
SGKの意見交流の材料にしていきましょう.

どこかの年度に興味をもたれて,個別のエッセイを探索し,
翻訳されたりした場合は,ぜひ投稿ください.
SGK通信を充実していきましょう.
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MAM1996

数学強調週間 ( MAW )――4月21〜27日, 1996

  「 Mathematics and Decision Making/ 数学と意志決定 」

数学連合政策会議 ( JPBM )は,諸君を数学強調週間4月21〜27日,1996年の期間に,数学の広がりと深さの祝典に御招待する.1996年のMAWのテ−マは「数学と意志決定」で,その話題の広さと範囲は,多くの聴衆に対し数学の力と多様性を伝える一つの焦点として有用である.
我々は毎日多くの意志決定をしている.天気予報に従って,出掛けるル−トに合う服を決める.更に多くの意志決定が,商品やサ−ビスの提供者や公共政策の立案者に求められる.数学は多くの意志決定に対して,重要な役割を演じる.用いられる数学に対するよりよい理解は,我々を感動させるよりよい意志決定や理解力を助けるであろう.
数学と意志決定は,確率.危険.不確実や予言の様な概念を含んでいる.財務上の意志決定は,ポ−トフォリオ最適化.選択過程や危機管理の様な手法を組み入れる.オペレ−ション・リサ−チ ( OR:作戦計画 )――ある実際的行動を最適化する数学モデル――は政府や工業界で広く利用される.危機評価や管理は公共政策――特に健康と環境政策――をつくるのに重要な意味をもっており.通常の研究では容易に研究され得ない極端な状況へ如何に外挿するかというより広い論点を示唆する.
ここにより多くの聴衆を数学にさらす一つの機会がある.――新しい数学の創造と発見から意志決定に使える多くの方法を示す.我々は諸君に諸君の同僚と共に MAW 1996のために直接,計画を始めることをお薦めする.諸君は諸君の学園.会社.あるいはその地区の学校で特有なプログラムによる MAW 1996を観察することが出来る.アイデア発想のために祝典MAW 1995年に選ばれた活動の添付要約を見て下さい.

 エッセイ ( 試論 )」:数学と意志決定――
Paul Davis, Worcester Polytechnic Institute.17人の顧問団からの意見を編集した.

意志決定が我々の生活を形づくる.数学は,いかなる意志決定においても,情報をふるいわけ選択肢の比較を合理的に行う.数学的モデルが,コンピュ−タが生みだすデ−タの圧倒的流れを制御し理解して,意思決定を支援するコンピュ−タ・プログラムの基礎となっている.数学は,不確かさに直面して,情報の質を評価改良し,選択肢を明確に提示し,役立つ選択とその結果を示し,大きな目標に到達するのに必要な,小さな意志決定を制御しさえもする. 統計.最適化.確率.待合せ理論.制御.ゲ−ム理論.モデリングやオペレ−ションズ・リサ−チの様な数学――意志決定に用いる数学応用分野――は,公共政策,健康,ビジネス,製造業,財務,法律,その他の多くの人間の企てにおいて、難しい選択をするのに欠くことはできない.数学は,経済的な発電,金融市場での利益,有効な新薬の認可,法的証拠の優劣,航空機の安全,複合建設プロジェクトの管理や新ビジネス戦略の選択などの多くの意志決定における心臓部である. Tani/Katase
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MAM1997

数学強調週間 ( MAW )――4月20〜26日, 1997年

  「 Mathematics and the Internet/ 数学とインタ−ネット 」

   ◇ テ−マ・エッセイ
数学とインタ−ネットは,言語とシェクスピアの作品との関係とよく似ている.というのは,彼の作品は言語なくしては考えられないからである.一方,彼の作った詩や演劇の中では,逆に使われた「言葉」を豊かにしている.コンピュ−タは,数学という言語の中から生まれた.二進数がもとになって,コンピュ−タは言葉,音楽,画像などを表現させる事ができ,そして今や,PCマシンは 0と1の2数だけでインタ−ネットを通じてそれらを伝達する事ができる.コンピュ−タは,その様々な動作やインタ−ネットのアドレス設定,さらには情報検索エンジンさえも,数学の論理を使った公正なル−ルに従っている.インタ−ネットの世界では,数学はメッセ−ジや金銭取引の秘密保持の心臓部として,機能している.また,数学は,大容量ファイル伝送時のデ−タ圧縮,符合化およびエラ−修正のための基礎的ツ−ルである.また,数学は,電子メ−ルの住所管理やWWW(世界規模の情報検索=Web)検索のためのデ−タベ−スの土台であり,メッセ−ジ発送やネットワ−ク管理の代理人としての役割もある.また,インタ−ネットは,数学の学術研究や教育の進展に大きく貢献しているのだ.教育者や学術研究者のグル−プは,電子メ−ルやニュ−スグル−プ(会員制掲示板)さらには,特別なWebを通じて情報交換している.
また,インタ−ネットは,2000年間, 安全と考えられてきた慣例信号コ−ドを壊し,数十の国を通してコンピュ−タを横断的に結合する最近の協同努力ともいうべき分散処理(Distributed Computing)を支えている.
インタ−ネット上の管理デ−タ―――殆どの人が知っているように,インタ−ネットメッセ−ジ,電子メ−ル,画像,音声,デ−タベ−ス検索結果は,すべて0と1の連続信号として伝送される.数学はこの二進数への変換と伝送という二つの領域の中枢である.
インタ−ネットのセキュリティ―――インタ−ネット上のセキュリティは銀行の金庫室の安全と全く同様に重要である.
セキュリティの範囲は,メッセ−ジのプライバシー維持とコンピュ−タの完全保全であり,その他多くの問題の中で金銭取引の信用保持も含んでいる.
急速に進展しつつあるインタ−ネット市場は,例えば何百年来の古い整数論に過去20年の新しい知見を結びつけた秘密コ−ドに大きく依存している.
更に,このようなコ−ドを解読するための努力が,広く配置されたマシンで分散処理する様に,インタ−ネットを利用してなされる順番に行う分散処理は多数の素数因子に対する系統的探索に関するフェルマ−の古い手法を,近代的に拡張する決定的な方法で支えられている.
デ−タベ−スと検索―――Alta VistaとかYahooのような強力な検索エンジンによって,インタ−ネットユ−ザ−は全てのサイバ−空間に隠された専門化された情報の金塊を見つけ出す事ができる.これらほとんどの検索ツ−ルの心臓部は,キ−ワ−ドの索引にある.各々の索引は,キ−ワ−ドを含むWebサイトのエントリ−リストに載せられる.
(ある検索の索引で“数学”へのエントリ−は332,966サイトと表示される).
理想的な検索エンジンは,与えられたキ−ワ−ドについて全てのエントリ−索引を横切るだけでなく,検索者の要求に応じて
各表示サイトの関連可能性を反映した優先性評価をも返信する事である.
最新のある理論では,関連性のある幅広い検索は結果として索引の中に情報のベクトル空間モデルを導入する.空間の座標は索引の項目であり,誰もが検索できるキ−ワ−ドの語彙である.各Webサイトは,そのキ−ワ−ドの上でヒットする事で座標が決まる空間の一点である.そこでは多分最も関連するキ−ワ−ドに最大の座標値が与えられる.同類の情報を持つサイトは最寄りの空間中のある点によって代表される.
検索とは,非常に高次元の空間中で理想的には空間の次元より速くなる計算でもって,最も近い隣人を探す問題といえる.これらの空間にどのように情報が配分されるかという確率的モデルの割付けは標準的でない幾何学に導かれる.例えば不等辺三角形(二辺の和が残った一辺よりいつも長い)は役に立たない.むしろ,更なる効率的な検索演算法の発見への挑戦を複雑にする.代数的透視からキ−ワ−ド座標のベクトルは,情報サイト投射マトリックスに対してキ−ワ−ドの縦の列と考えられ,与えられたあるキ−ワ−ドに対応する列を横切って そのキ−ワ−ドを含む各サイトのいずれかにエントリ−する.最終目標は,キ−ワ−ド間の関係を明らかにする事によって,同類の情報をもつサイトを見つけ出す事である.
親戚関係デ−タベ−スの処理に関するル−ルは,そのデ−タベ−ス構造に対する代数的相関あるいは解析的相関により数学的に定義される.数学はデ−タベ−ス構成を記述するフレ−ムワ−クであり,数学的ツ−ルはそれらの効率と信頼性を改良するための基礎である.
経路とネットワ−クの構成―――中規模のロ−カルネットワ−クは相互に通信する一万組の結節を有する.彼等が分配するメッセ−ジは,ネットワ−クのトラック上を光の速度で走っている列車のようなものである.汽車の各々の車両は1メッセ−ジの一部分を運ぶ,それはあたかも長い手紙が一連の多数の葉書に別けて書かれ,それが車両一台に一枚づつ別けて乗せられるようなもので,通常一つの列車には多くのメッセ−ジからの葉書が混載される.待合わせ理論(Queuing Theory)の数学的思考は,これらのメッセ−ジの束の大きさと列車の到着のパタ−ンに関する情報に基いてメッセ−ジを取り扱う通信方式の挙動を予測する事ができる.(古典的待合わせ理論では顧客の到着パタ−ンと窓口時間が与えられると銀行での待ち時間を見積もる事ができる.)しかし交互メッセ−ジを扱う方式の研究はメッセ−ジ交通の数学的モデルに基いている.良いモデルは新しい方式が待合わせ理論の予測と実際に同様な形になる事を保証し,悪いモデルは方式を開発する人に履行し得ない事を約束させる事態に導くだろう.
情報検索(Web)上の数学―――数学者はインタ−ネットとWWW=Webの利得をフルに享受している.これらのツ−ルは彼等に教育と学術研究の向上のため地理的或いは学問上の境界を超えてアイディアと技法,そして資源を共用させている.
数学とインタ−ネット―――数学はインタ−ネット操作の言語である.
それは言葉や映像を叙述する二進数からWWW=Web=情報検索に対する検索エンジンの複合的デ−タ構造に至るまでを含む.
整数論のような分野からの新旧アイディアの巧みな組み合わせによって,金銭取引保証に関するデ−タ暗号化のようなインターネットのキ−テクノロジ−の開発が可能になった.
同時に,インタ−ネットによって,数学教師や研究者の間で世界規模的に協調が進み始めている.その協調によって,幼稚園から大学までの教育を促進し,又純粋数学と応用数学の最も難しい問題に対する我々の認識が高められつつある. Funada/Katase
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MAM1998

数学強調週間( MAW )――4月26日〜5月2日, 1998

   「 Mathematics and Imaging/ 数学と画像処理 」

医学,コンピュ−タ−科学,宇宙探検,その他諸々の分野の画像処理にとって,数学は基本要素である.例えば医学はインピ−ダンストモグラフィ応用の断層撮影技術の恩恵を受け癌性腫瘍の診断を大いに改善し,又動的解像法によってMRI磁気共鳴画像から心臓鼓動のイメ−ジを抽出できる様になった.コンピュ−タ−画像は,数学ツ−ルの全分野に依存している.ウェブレット変換は3次元映像を2次元画像の中で効果的に表現してコンピュ−タ・グラフィクスにより創出された画像が,現実感があり違和感のない可視実現となる.Microsoft百科辞書や同社の7000カラ−イメ−ジが,フラクタル画像圧縮技術により1個のCD-ROMに収納されている.画像圧縮技術は又宇宙探査の基本ツ−ルである.例えば火星探査衛星からの信号をモニタ−している科学者達は宇宙船が火星に到着するとき,僅かに毎秒40バイトのデ−タを受信するに過ぎない.(普通のモデムより700倍遅い)圧縮は通常イメ−ジデ−タを15乃至20の倍率迄通信速度を増加させている.画像の基本特性を損なわずに数百倍の圧縮比率に迄高めようとする新技術も間近であり,これらの新機軸の一つウェブレット画像圧縮は,既にFBIの指紋記録巨大圧縮ファイル(ア−カイブ機能による)にあって情報検索を可能にしている. イメ−ジ復元技術は種々の分野において他の方法では隠れたままになっているイメ−ジの細部を抽出する.人工衛星,医療画像装置,天体望遠鏡,そして法廷に証拠提出されるアマチュアのビデオ画面迄もが含まれる.

◇ テ−マ・エッセイ――政治家や広告屋は画像を加工したとしてしばしば告発される.多くの数学者にとって画像加工は身近なものになっているが,それは選挙を有利な方向にまわそうとか,売り上げを伸ばそうとかの次元ではない.これら科学者は,概念,ツ−ル,アルゴリズムを提供して,火星からの信号を使った電子映像,アマチュアのビデオテ−プから引き出した法廷での決定的証拠,機能臓器の画像による非侵襲的医学診断のような現代の奇跡に活躍している.
数学は種々の分野のイメージングで中核技術である.

--画像復元:法廷やNASAのラボで映像を鮮明にする.
--能動的光学:天体の鮮明な画像を宇宙飛行士に提供する.
--画像圧縮:FBIの指紋台帳,インタ−ネットのグラフィクス送信,宇宙写真の伝送
--トモグラフィ:外科手術なしに患者体内の癌性細胞を探査する.
--コンピュ−タグラフィクス:平面スクリ−ンに3次元映像を創出,表現,加工する.
--画像分析:血栓の大きさなど潜在情報を自動検出する.

現在要求されている数学は,マトリックス理論,偏微分方程式のような古典の現代応用からフラクタルやウェブレットのような新規概念にまでと幅広い.これら様々な応用の一つ一つで,数学は最新の科学計算や洗練された工学と並行して,基礎概念とアルゴリズムを定義して世界中の法廷,住居,研究所,オフィスで画像処理の道を開いている.
結論――古典の曲率論から最新のウェブレット迄数学思想は画像処理の根底を作っている.高速コンピュ−タと独創の工学と結合して,数学は我々を宇宙へ,そしてより鮮明に我々の体内に導いてくれる.数学と工業技術とのこのような結合は手許に巨大図書館を置いたかのように,又乱雑なデ−タの塊を可視化出来るようにして我々の世界観を照らし出す.数学は確実に我々自身と世界の視野を拡大している.Tani/Katase
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MAM1999

数学強調月間 ( MAM )――4月, 1999

   「 Mathematics and Biology/ 数学と生物学 」

1999年4月,MAMの準備のために,数学連合政策会議( JPBM )はテキサス・インスツルメント社がこの年の行事「数学と生物学」に関する公式スポンサ−として名乗り出た事を公表したい.

MAMは,数学の重要性や多様性,日常生活との関連などの促進機会を数理科学業界に用意する.テキサス・インスツルメント社とJPBMは,数学の価値を諸君の同僚,生徒や社会に通知するためのMAMウエブサイトに掲載した,役立つMAM,1999年の材料と資源の0000をお薦めする.MAMウエブサイトのアドレスはhttp://mathforum.org/mam.である.

1999年のMAMテ−マは「数学と生物学」である.数学は医学,人間遺伝子,伝染病学や研究解析等さまざまな分野の本質的な要素である.生物学における数学の表現として同封した1999年MAMのポスタ−は正常な心臓の電気的活動を,それがあたかも一点が刺激されて広がる様に描写している.色は電気的信号が心臓を伝播して到達する時間を目だたせるのに使われている.長方形の領域は心室の壁の大きな板を表している.又すべての領域は解剖学的デ−タ−からとられた幾何学と繊維方位を使っている.数学なしでは,この3次元概念を見る他の方法はない.心臓研究に関する数学のもっと詳細な記事はMAMウエブサイト ( http://mathforum.org/mam/99/essay1.html )を見て下さい.

MAMはそれぞれ各位の生活と関連する数学について新しい方々と交信する素晴らしい機会を提供する.
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「テ−マ・エッセイ」
◇ 心臓における数学  Dr.James Paul Keener  ユタ大学
◇ 数学とDNA     Dr.De Witt Sumners  フロリダ州立大学
◇ 数学と社会生態学  Dr.Louis J.Gross   テネシ−大学
◇ 生物学がいかに数学に影響するか
            Dr.Louis J.Gross   テネシ−大学

Tani/Katase
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MAM2000

Mathematics Awareness Month ( MAM )――April,2000

     「 Mathematics Span All Dimensions/ 数学は全次元に 」

次元たどりの象徴図柄――MAM2000の電子ポスタ−にある「山羊の角」は,0次元空間から多次元空間への道標である.各分野に貢献した11名の業績を紹介する.山羊の角の先端(0 次元空間)から,1次元の地層コアサンプルやレ−シングカー地形(R.Tapia),E. A. Abbottの“平面国”やG.Pixerのアニメーションスタジオの2次元世界へ,バレ−振り付け,結晶幾何学(M.Senchal)の3次元から,重力レンズ(A.Petlers)の4次元,より高次元の宇宙論,超空間,Madeleine L'Engleの小説”時間のひだ”へと導かれる.

数学的な点,線,面,空間,高次元――
海上で,或いは顕微鏡試片に位置を定めるのは繊細な仕事である.位置は一つの直線上や一つの曲線上であれば,1数字で記述できる.1点が定まれば他の点はそれからの距離で特定できる.地図上の位置は2つの数字 緯度と経度を必要とする.地球表面からの高度或いは深度があれば3座標,緯度,経度と高度(正数)又は深度(負数)となる.調査や試料採取には位置決めがついてまわり,3つ,4つ或いはそれ以上の数字を必要とする.数学者がパタ−ンを求める時,コンピュ−タが大きな役割を演じる.2乃至3個の変数をもつ位置の集合をコンピュ−タ画面上に表示でき,これらを動かして見ると,位置デ−タの原簿では明らかでなかったパタ−ンが見えてくる.デ−タのこの様な処理は,探索的データ解析と呼ばれJ.Tukeyがその先駆者である.点とはその位置を示す特性に過ず,長さ,幅,高さ,厚み,容積を持たない.数学ではこれを0次元と呼ぶ.
線分は1次元の対象で,両端末が定まれば,線分上の各点を一つの記号で特定できる.1つの端末点を0,他端末点を1として,中間点は1/2と特定する.線分が絡まりあるいは平面と係わると記号は増えるが線分は1次元のままだ.1次元空間の好例は地質学者が採取する地中標本で,深く掘り下げて,各深度の地質を調べることができる.勿論 試掘点の緯度・経度を記録する二つの記号は必要である.この分野では,古代生態学のT.Webbが貢献している.円周は1次元で起点から0〜360でどの位置も現せる.
水平・垂直で構成される直方形は2次元空間の例で,直方形のどの位置も二つの記号で表現でき,基点を左下隅から右上隅に変えても,二つの記号である事は変わらない.複数の直方形の中から一つを選ぶ場合は,二つ以上の記号を要する.平面座標に並べられた直方形は2次元物の4次元集合となる.直方形の1点を軸に回転させると,もう一つの次元・回転角を加え,この種の回転は2次元コンピュ−タ画面にアニメ−ション等の応用をもたらす.
2次元物を平面上で回転させたと同じように,3次元物を空間で自在に回転させると3Dコンピュ−タ画像上に素晴らしいアニメ−ションを実現する.19世紀以来,時間が3次元空間に付加されて,4次元を構成すると考えられ,20世紀物理学で発展してきた.何処(3次元)で何時(1次元)と催し物を明示するのは,数学では4次元(abct)となる.時間以外にも4次元があり,これをどの様に表現するかが問題で現代物理学では10〜26次元の展開をしている.超紐理論のM.Kaku,宇宙学のJ.Weeks,M.L'Engleの“時間のひだ”は5次元世界の出来事を述べる小説,バレ−の振り付け師J.Strandbergやアニメ−タE.Catmull, T.DeRoseも多次元世界を駆使している.アニメやビデオ・ゲ−ム制作にも数学が必要となる.Tani/Katase
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MAM2001

Mathematics Awareness Month ( MAM )――April, 2001

「 Mathematics and the Ocean/ 数学と海洋 」  Barry A.Cipra and Katherine Socha

? 惑星の海洋―――地球の最も驚くべき事実はそれが水をかぶっている事である.我々の惑星の表面を支配し,遥か内陸に住んでいたとしても人々の生活に影響する地球の海洋――地球を巡り大西洋・太平洋や多くの小さい海を含む水の巨大な広がり――は,永らく驚きと恐れの源であった.有史の初期以来,人類男女は海洋とその中における生活の挙動を理解する様に努めて来た.海洋の知識は完全からは遠いが着実に進歩している.その多くの部分は数学の新しい発達に負っている.
科学的な接近は数学的解析の必要性をもたらした.今日 海洋学は基本的な海洋過程を表現する数学の方程式を使い,それらの意味を理解する数学的な理論を必要とする.研究者は音波ブイ,船舶計器や衛星からの多くの錯綜したデ−タ−を組み立てる統計学とその過程を利用する.偏微分方程式が,岩の海や航行する船の表面波から地球の周りを流れる深い海流に対してまでの流体運動の力学を記述する.数値解析により,これらの方程式の精度の高い解が得られるようになり;動的なシステム理論と統計学が付加的な洞察を導いた.今日の海洋学者はガリレオやニュ−トンの最高の伝統を継いで正に数学者である.数学は近代海洋学にぴったりの言葉であると諸君は思うだろう.
? 数学で何をやるか?―――もっとも基本的なのは,いかなる海洋過程もすべて変化することである.計測値は時間と共に変化する.(例えば潮流は1日2回の干満で海岸が動く)或いは場所から場所へ変わる(例えば潜水艦が海に深く潜った時の圧力).しかし温度や塩分の様な多くの数値は場所と時間の両方で変化する.変化する過程の表現に即応的な数学の領域は微積分と微分方程式である.特に偏微分方程式(略してPDE)は,時間と空間で連続的に変化する量を表現する.海洋学のすべての分野はこれらの問題に重く係わっている.
? 物理海洋学の観点―――物理海洋学は,惑星規模の循環と気象,沿岸海洋学,赤道海洋学,内面波動と乱流,表面波,大気−海の相互作用等を含む多くの学問分野を持っている.これらの分野で研究される現象が,複雑な形で相互作用しているのだが,多くの海洋学者は一つだけを見ている.これらすべての分野の包括的な評価は,海洋百科事典の大変多くの内容に満ちている.ここでは近代物理海洋学の特性がわかるいくつかの例を示す.
−−惑星規模の循環と気象
−−内面波動と乱流
−−渦
? 流体の将来――今日 海洋学者や応用数学者になるにあたり,最も興奮することの一つは,技術的・理論的進歩が非常に速いことである.目覚ましい技術的改良は,初期の海洋学では想像もできなかった大量デ−タの収集と解析を可能にした.10年前に比較して,今や巨大で上質な計算力が利用でき,大規模海洋モデルの高分解能の数値解が得られるようになった.それらは,実際の海洋デ−タの財産と比べられる理論的な結果を,初めて導き出すのに十分である.将来の数値解析は,局地的海洋モデルの正確な予報ができるような高分解能なものに進歩するだろう.
? 海洋を夢みる―――海洋はいろいろな感懐を呼び起こしてきた.海の美しさは我々の想像的美術,音楽,詩や科学を描き上げ世紀を通して人間の意識に共鳴して来た.疑いなく人類は海の精の歌に魅惑され――数学を含む――すべての有用な資源を使い海洋と共に生き それを理解し その魅力に惹かれ続けるであろう.Tani/Katase
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SGK通信(8)

SGK懇談会へぜひおいでください:
「数学月間について話し合いましょう」


数学月間の開始日 7/22(土),11:30-2:00,
シーボニア(星陵会館4F,日比谷高校内)にて開催します.
会費:¥3000円(立食形式)
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SGK通信(7)

社会や企業で数学を求める声が大きくなるのとは裏腹に、この数年、科学研究費全体の中で、数学の占める割合は小さくなっている。目に見える成果を求めて重点的に投資するやり方に、地味な数学ははじき飛ばされてしまった。この間に米国やドイツは数学の研究予算を増やして強化を図っている。数学の理論は、何十年もたってから応用の道が開ける場合も多い。木の幹にあたる基礎的な研究をしっかりと育てる必要がある。同時に、さまざまな応用分野へ枝を伸ばす数学者を育てることも大切だ。数学者はこれまで自分の専門に閉じこもりがちだった。生物学や工学などの他の分野に目を向け、積極的に進出した方がいい。それが数学そのものを鍛えることにもなる。数学者があちこちで活躍できることも見せてもらいたい。数学の力や魅力が社会に伝われば、算数を好きになる子供たちも増えるだろう。それは長い目で見れば、数学のすそ野を大きく広げ、人材を厚くすることにつながる。
http://www.asahi.com/paper/editorial20060613.html#syasetu2
(朝日新聞6月13日社説より)
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