SGK通信(7)

社会や企業で数学を求める声が大きくなるのとは裏腹に、この数年、科学研究費全体の中で、数学の占める割合は小さくなっている。目に見える成果を求めて重点的に投資するやり方に、地味な数学ははじき飛ばされてしまった。この間に米国やドイツは数学の研究予算を増やして強化を図っている。数学の理論は、何十年もたってから応用の道が開ける場合も多い。木の幹にあたる基礎的な研究をしっかりと育てる必要がある。同時に、さまざまな応用分野へ枝を伸ばす数学者を育てることも大切だ。数学者はこれまで自分の専門に閉じこもりがちだった。生物学や工学などの他の分野に目を向け、積極的に進出した方がいい。それが数学そのものを鍛えることにもなる。数学者があちこちで活躍できることも見せてもらいたい。数学の力や魅力が社会に伝われば、算数を好きになる子供たちも増えるだろう。それは長い目で見れば、数学のすそ野を大きく広げ、人材を厚くすることにつながる。
http://www.asahi.com/paper/editorial20060613.html#syasetu2
(朝日新聞6月13日社説より)