2006年6月の記事一覧

mam1994

数学強調週間 ( MAW )――4月24日〜4月30日, 1994

    「 Mathematics and Medicine / 数学と医薬 」

数理科学は生物資源学から生理学に至る医薬に多くの貢献をしている.例えば数学者達は心臓の現実的な3次元モデルをつくっている.実用的には,数百の閉じた曲線による筋繊維に沿って弾性力が心臓に働き,流体力学の方程式で血液が流れるような模倣である.
心臓は,CAT(computerized axial tomography),MRI (magnetic resonance imaging), PET(positron emission tomography)などで,医学的イメ−ジをつくる数学的な再現技術を用い見ることができる.これらの技術を使って,数千の分離測定を数学的に連結して,心臓を見たのと同様に,脳髄,肺臓,腎臓の腫瘍や他の非正常を見出すことが可能な単一画像をつくれる.
数学研究者は,生物学者や内科医と一緒に,多くの心臓発作が予見し得るのか疑問に思っている.別の言い方をすれば,心臓はあたかも決定論的なカオス・システム--例えば非線形力学理論--であるかの様に振舞っているかも知れない.疑わしいパターンが,もっと容易に検出され認識されるなら,高リスク患者を心電図を用いもっと容易に識別できることを示す数学的研究が進行中だ.
心臓の理解が深まったもう一つの例は,流体力学を通してで,方程式の解はコンピュータ近似でのみ解くことができる.血流中で解かねばならぬ未解決問題中に,心臓壁の動きが残されている。
複雑な階層システムの解析は近代医学の研究で,もう一つの重要な領域だ.数学的モデリングは,ネットワーク理論,情報統合,ランダム・グラフが基本的なツールである神経科学で非常に役立ってきた.
この様なシステム概念は、膨大な数の細胞やそれらの相互作用を観察し解析する免疫学で,非常に貴重である事が立証されて来た.この領域では,制御理論同様,常微分方程式や分岐過程を含む数学応用が利用される.HIV伝染の動力学や免疫システムへの効果に関する理解は数学的研究のもう一つの焦点である.計量的分析や免疫の確率評価に加えて,伝染病学モデルはワクチン戦略を発展させるのに必要である.
数学的シミュレ−ションとモデリングは,組み換えDNA技術の視覚化と理解への鍵でもある.事例は1994 MAWのテ−マ・ポスタ−に見られるであろう。DNAの撚線は位相数学と微分幾何学の技術を使い調べられる.人ゲノム情報のデ−タ・ベ−スは,拡張され複雑となり,組合せ,パタ−ン識別,順序比較の様な数学的アプローチが要求される.
製薬工業では分子構造のコンピュ−タ・モデルが開発されつつある.新薬は,新しい数学アルゴリズムが見つかるとすぐ設計される.
健康統計学は,長期間蓄積され,るコスト管理,公共政策研究,人口統計,環境要因の様な他の変数と関連す病気傾向などの多様な目的のために解析されている.
医薬に対する数学のその他の貢献は,非常に具体的な――医薬製品になる材料を設計する――から,非常に抽象的な――情報経営までにわたる.数学的モデルは先端材料――記憶合金,高強度セラミックス,重合体システムや非線形光学材料などの設計やプロセスを支援する.統計的解析は,デ−タを臨床段階から更に有用で意味のある形にする.数学的モデリングは,解析的課題をアルゴリズム法で着手できる定量関係や方程式へと帰結させる.数学的アルゴリズムは,定量関係と方程式を,コンピュータ数値計算に適する形に表現する.
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mam1995

数学強調週間 ( MAW )――4月23日〜4月29日, 1995

  「 Mathematics and Symmetry / 数学と対称性 」

対称性は身の回り至る所,毎日見る物体の中にも顕れる.例えば,建物,床面や壁面のタイル,用具,自動車のハブキャップにも見られる.対称性は,自然のさまざまな形態にも見出される.人体における左右対称,花びらの回転および万華鏡的対称性,ツタや貝殻のらせん対称性,蜂の巣や魚の鱗の並進対称性等々だ.対称性は,色々な文化圏の装飾芸術にも見られる.例えば,アルハンブラのムーア人の装飾デザイン,アメリカの南西部のインディアンの織物,数学的モダン・グラフィック芸術家M.C.Escherの作品の奇妙に組み合わさった生物等々.実際,ある文化圏の装飾芸術に見られる対称性の特徴は,その文化圏のマーカーとなる.対称性は,巨大スケールでは,特殊相対論で距離の定式化や銀河の形に,ミクロのスケールでは,結晶構造の分類に顕れる.対称性は,数学でも重要な役割を演ずる.5次以上の方程式は,公式で解けないことの証明から,幾何学タイプの分類や保存則の存在などだ.数学者は,対称性とは,物体,図形や等式などを,不変に保つ変換の集合であると定義する.これらの変換の集合は,物体の対称性と呼ばれ,群をなしている:物体の対称群.人間の体や完全な蝶などの物体は,左右対称である.鏡映面に関し左右の映像は全く見分けることが出来ないからだ.同様に,繰り返し模様,壁紙模様は,動かしてまた重ねると.全く重なるようにできる.らせん対称の物体は,中心軸のまわりのらせん運動で不変となるような対称性である.群論により,パターンの異なるタイプを区別できる.群論を用いて,数学者は,繰り返し壁紙模様(周期的な平面タイリング)が,17種類であることを証明できる.実際,Lieの連続群の発見に始まり有限単純群の最近の分類までのこの百年で,群論は数学の最もエキサイティングな分野の一つになった.群論と,トポロジー,幾何学,解析学との膨大な関係を研究することは,数学研究の中心テーマであり続けている.ガロワ理論に始まり最新の研究へと続く対称性は,方程式−最初は代数方程式,今は微分方程式−の解を見出すことを可能にした.対称性は,多くの自然現象の数学的な記述で中心的な役割を演じる.3次元繰り返し模様のカタログは,結晶格子空間に原子がどのように配列するかのカタログと同一である.化学者と数学者は,結晶格子を保存するような回転軸,鏡映面,並進の許される組み合わせの詳細な検討を行い,230の結晶空間群--結晶構造の230の形式--を分類した.[訳注:Fedrov(鉱物学),Shenfries(数学),Barlow(実業家)がそれぞれ独立に導いた]対称性は,固体と液体の構造とふるまいを支配する法則の確立に努める物質科学と弾性学でも重要である.対称性は水素原子と分子の分光の理解の基礎となっている.20世紀物理学の2冠業績−−相対論と量子力学−−でも同様だが,素粒子やクォーク理論でも基礎である.現在進行中の統一場理論−−自然界のすべての力を導き出す一つの理論-−に関する研究を,物質宇宙の基本的な対称群の探索と見なしてもよい.その対称群から,すべての物理法則が導かれる.対称性は,技術分野でもびっくりするようなところに出現する.コンピュータ・ビジョンで人間の視覚(投影)の対称性は,医学応用で重要となる画像処理システムの数学的基礎デザインに繰り込まれる.制御理論の応用で,回転,並進対称は,飛行機や衛星のフィードバック制御を設計するときに考慮に入れられる.対称性の欠如は,美術や音楽でハッとする効果をもたらすように,対称性の欠如や消失は,自然現象のモデルでも,しばしば劇的な効果があり大きな関心事だ.構造がつぶれるとき,水の沸騰,(あり得るなら)豹に斑点ができ,トラに縞ができるとき,対称性が破れる.20年前,数学者と物理学者は,乱流へ至る道程をデモした.対称性の消失が引き続くと,さらに複雑な流体の流れに発展する.この種の探求は,対称性の明らかに逆説的な役割を与える.--その役割は,複雑あるいはカオスの振る舞いに至る道程.今年のMAWポスターの映像は,対称性とカオスダイナミックの結合を用いている.詳細複雑な構造は,カオス的ダイナミックスによるが,一方で規則的で見慣れているのは対称性による.
高次元の秩序はなんら全域的な対称性を持たないように見える.だが,対称性はこれらのパターンをも記述し分類する.並進を生じずに張り詰めているタイルと,新しく発見された”準結晶”.ここには,従来の結晶のモデルでは禁じられている対称性がある.昨今,注目を集めている二つの研究分野である.
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