SGK通信(2012-13)数学月間懇話会の講演資料

-いただいた数学月間懇話会の講演資料をここに掲載します-
以下の文章は、レジメのつもりで谷が作成したものです。
不正確な段は、ご容赦ください。(↓文責:谷克彦)

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(1)細矢治夫氏、講演資料pdfs-hosoya.pdf
常用対数は高校数学ではアドバンストコースで、対数計算はやらない。これではpHの定義もできない。数学カリキュラムは他教科と連携に大いに係っている。

飽和炭化水素(アルカン)類の炭素の骨組みに対して、トポロジカルIndexの概念を1971年に細矢が定義した。これは、骨格中で、互いに隣接しない辺を選ぶとり方の数の和である。5個の炭素原子が1列に並んだ骨格を持つNペンタン分子を例にとれば、トポロジカルIndexは、Z=p(G,0)+p(G,1)+p(G,2)=1+4+3=8となる。ここで、Gと書いたのは、5つの頂点と4つの辺からなるグラフ、p(G,k)は、グラフG中に、隣り合わないようにk個の辺を選ぶ可能な数である。同じ5個の炭素骨格でも、グラフの型が異なる異性体が5つほどあるが、これらのトポロジカルIndexを求め、沸点温度との相関を見ると、見事に正の相関がある。
閉路グラフに対しても、同様にトポロジカルIndexが定義できる。毛虫グラフに対しても同様である。、
ベンゼン環が連なってできた芳香族(各炭素原子からは4本の結合手がある)で、2重結合の配置の異なる型をケクレ数というが、ケクレ数の大きい構造の方が、共鳴構造が多いので安定になる。トポロジカルIndexも分子の安定性の良い指標になる。さらに、トポロジカルIndexは、整数論と密接な関係がある。フィボナッチ数が出てきたり、連分多項式と毛虫グラフのトポロジカルIndexが等価であったりする。
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(2)石黒真木夫氏、講演資料pdfs-ishiguro.pdf
スタッツという必勝じゃんけんソフトを作った。過去のイベント(5万回ほどのじゃんけんの回数がある)で、子供と対戦させ[30点先取した方が勝ち(じゃんけんの回数にすると、1回のゲームで約100回)とするゲーム]、勝数は負数の約2倍の結果となった。スタッツが出す手を、2回前までのデータを踏まえ決定する。過去2回のデータは、3×3=9個のどれかになり、子供の出した手のデータを1列目に、スタッツの出した手のデータを1行目に表示する。スタッツの今度出す手は、この9×9のマップ内に表示される。これを”じゃんけんマップ”という。スタッツの出すべき手の確率は、勝ちの期待値を最大化するように決めるべきだが。この戦略を読まれてしまっては、逆に負けとなるので、実際にはランダム化との混合戦略をとる。自分の手、相手の手、勝/負の結果など、何をどこまでを考慮して推定するかにより、種々のモデル(スタッツでは14種)が作れる。これらのモデルは対戦する子供の思考過程の表現であり、どのモデルが最もよく合うか知ることは興味深い。この評価関数はAICによった。学生に”じゃんけんソフト”を作らせることは、統計の理解につながり、非常に教育的である。どのソフトが強いか[ソフトと人間の対戦で、勝率が高いのはどれか]を、競わせると面白いだろう。

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